保健と社会福祉
イスラエルの高水準の保健サービス、質の高い医療資源と研究、近代的な病院施設、人口当たりの医師数、医療専門家数の高さは、乳幼児死亡率の低さ(1,000人当たり4.7人)や平均寿命の長さ(女性82.5歳、男性78.8歳)に反映されています。乳幼児期から老年期に至るまで、法律によって全国民に医療が保証されており、国の医療支出で他の先進国と肩を並べています。
保健医療サービス
予防、診断、治療の医療ネットワークなどの医療制度の基礎は、イスラエル建国前に、ユダヤ人社会と当時この地を納めていた英国委任統治政府(1918~1948年)によって築かれました。そのため建国時には既に医療体制が十分に整備され、予防措置が当たり前のように行われて、環境整備の枠組みも機能していました。
しかし、建国から数年の間に、戦後の欧州やアラブ諸国から大量の難民が流入したため、国の医療事業はこれら難民の医療需要に対処するために、既に克服したはずの問題に新たに直面することとなりました。
イスラエルは国を挙げてこの問題に取り組み、特別な医療サービスの提供、広範な保健教育や予防医学の普及に努めました。国内には病院、外来クリニック、予防医学センターやリハビリセンターからなるネットワークが整備されています。病院では体外受精、MRIスキャンから複雑な脳外科手術、骨髄移植、内臓移植まで、高度な医療行為が行われています。
妊婦と乳幼児のための母子保健センターは、出生前の諸検査、心身の障害の早期発見、予防ワクチンの接種、小児科の定期健診、保健教育などを行っています。
行政当局
保健衛生は全て、保健省が管轄しています。保健省は、法制上の整備とその施行、医療水準の全国的管理、食品及び薬品の品質基準の維持、医療従事者の認可、医学研究の推進、保健サービスの評価、病院建設の計画と施工の監督などを主に行っています。また環境医学や予防医学の公衆衛生機関としての役割も果たしています。
医療従事者
イスラエルでは約3万2,000人の医師、9,000人の歯科医師、6,000人の薬剤師が病院や地域の診療所、または開業医として医療に従事しています。国内の5万4,000人の看護師の約72%は正看護師で、残りは准看護師です。
医療従事者の養成は、大学の医学部(4学部)、歯学部(2学部)、薬学部(2学部)、及び15の看護学校(内7校が学位を授与)で行われています。理学療法士、作業療法士、栄養士、レントゲン技師、医学技能士も複数の教育機関で養成されています。
健康保険
国民保険法は、イスラエル全居住者に対して入院を含む一定水準の医療サービスの提供を規定しています。医療サービスは、4つの総合的な健康保険機構により提供され、いずれの機構も年齢や健康状態にかかわらず申請者は誰でも加入できます。
その主な財源は、国民健康保険機構が徴収する毎月の健康保険税(収入の4.8%が上限)と、事業主が負担する従業員の保険料で構成されています。各保険機構は、保健省が設定した判断基準(被保険者の年齢、医療機関から自宅までの距離など)に照らして算出された加重平均被保険者数に応じて、その支出額の返済を受けています。
健康問題
イスラエルの健康問題は、西側先進諸国の傾向と共通しています。心臓病と癌が死因の3分の2を占めるため、これらの病気の対策研究が国の優先課題とされています。老人医療や環境の変化から生じる諸問題、生活習慣病、交通事故や労働災害も懸念されています。健康管理に関する教育も広く推進されており、喫煙や過食、運動不足など健康に有害であることが立証されている習慣を止める必要性が訴えられています。
また労働者やドライバーを対象に、潜在的な危険に対する注意を喚起するキャンペーンが頻繁に行われています。