高等教育
高等教育は、国の社会経済的発展に重要な役割を果たしています。イスラエル建国の25年ほど前に、技術者や建築家の養成を目的としてハイファにテクニオン・イスラエル工科大学が設立され(1924年)、またイスラエルの地における若者の高等学問の中核としてエルサレム・ヘブライ大学も創設されて(1925年)、外国からもユダヤ人の学生や学者を引き寄せました。
イスラエル独立時(1948年)のこの2つの大学の在籍者数は約1,600人でした。2009~2010年には、国内にある高等教育機関に約28万0,000人が在籍し、そのうちの38%は大学に、41%は単科大学に、21%は公開大学の講座に通っていました。
イスラエルの高等教育機関には学問と運営の自由が与えられており、各機関の学力水準を満たす人は誰でも入学することができます。入学に必要な資格を欠いている移民や学生には特別な準備コースが用意されており、コースを無事修了すれば大学への入学資格が与えられます。
学生
イスラエルの学生は、兵役義務(男子は3年、女子は2年)があるため、大学で勉強を始めるのはほとんどが21歳になってからです。1960年代の初めまでは、学生は主に学識を高める目的で高等教育に進学していましたが、最近ではキャリア志向の者が多く、専門性の高い学部に進む学生数が増えています。
現在、20~24歳の年齢層のイスラエル人の半数以上が高校を卒業後、専門学校や大学に在籍しています。全学生の58%は女性で、文系修士課程の60%が女性です。
大学
テクニオン・イスラエル工科大学(ハイファに1924年に創設)は、イスラエルの技術者、建築家、都市プランナーを多数輩出しています。この数10年の間に、医学部と生命科学部も増設されました。この大学は科学技術分野の基礎及び応用研究の中核として、イスラエルの工業の発展に貢献しています。
エルサレム・ヘブライ大学(1925年創設)は、美術史から動物学まで、ほぼあらゆる学問分野の学部を揃えており、またイスラエルの国立図書館もこの大学内に置かれています。設立以降、ヘブライ大学出身の科学者はイスラエルの発展の様々な段階に積極的に関わっており、そのユダヤ研究学部は世界で最も包括的なユダヤ学問の学部の1つとされています。
ヴァイツマン科学研究所(レホボトに1934年に創設)は、元々シーフ研究所として創設されましたが1949年に拡張され、イスラエルの初代大統領であり著名な化学者でもあったハイム・ヴァイツマンの名を取ってヴァイツマン科学研究所となりました。現在は物理学、化学、数学、生命科学分野の大学院の中核的存在とされており、この研究所の研究者は工業の発展や新たな科学事業の設立を加速させるプロジェクトに携わっています。科学教育学部もあり、高校で使用するカリキュラムの作成が行われています。
バル・イラン大学(ラマット・ガンに1955年に創設)は、ユダヤ遺産の研究プログラムに様々な学問分野(特に社会科学分野)の自由教育を統合的に組み合わせてユニークな教育を行っています。伝統と近代科学を融合させ、物理学、医療化学、数学、経済学、戦略研究、発達心理学、音楽、聖書、タルムードなどに関する研究機関を備えています。
テルアビブ大学(1956年創設)は、イスラエル最大の人口過密地域であるテルアビブ地域の大学の必要性に応じ、3つの既存機関を統合して設立されました。現在ではイスラエル最大の大学として様々な学部があり、基礎研究と応用研究の両方に重点を置いています。この大学には戦略研究、保健制度の管理、技術予測、エネルギー研究の専門研究所があります。
ハイファ大学(1963年創設)は、イスラエル北部の高等教育の中核として学際的な学問の機会を提供しており、複数の学際センターと研究所を備え、学際的な学問に適した建築設計とされています。キブツを社会的経済的主体として研究する特別な部門や、イスラエルのユダヤ人とアラブ人の間の理解と協力を進めるためのセンターもあります。
ベングリオン・ネゲブ大学(ベエル・シェバに1967年に創設)は、イスラエル南部の住民のニーズに応えるため、またイスラエルの砂漠地帯の社会的科学的発展を促進するために設立されました。特に乾燥地帯に関する研究で実績があり、また医学部はイスラエルの地域医療において先駆的役割を果たしています。同大学のキブツ・スデ・ボケルのキャンパスには、イスラエルの初代首相であるデビッド・ベングリオンの生涯や時代を歴史的、政治的側面から研究するためのセンターがあります。
イスラエル・オープン大学(1974年創設)は英国を模範とし、学位の取得を目指す人を対象に独自の非伝統的な高等教育機会を提供しています。主に自習形式の教科書や指針書が用いられますが、それと同時に体系的な宿題と定期的な個別指導で補足するという柔軟な教育方法が取られ、最後に試験が実施されています。
単科大学
地域の単科大学でも教養課程を受講することができます。多くの単科大学が総合大学の管理下で運営されているため、学生はまず自宅に近い単科大学で学位取得に向けて勉強し、その後に総合大学のメインキャンパスで学位を取得することも可能です。
いくつかの専門機関では芸術、音楽、ダンス、ファッション、看護、リハビリ治療、教育、スポーツなど様々な学科が用意されています。また一部の私立の単科大学では需要の多い学科(経営学、法律、コンピュータ、経済学、その他関連の科目)を学ぶことができます。さらに、技術や農業、マーケティングからホテル業まで、様々な学科の職業証明書や資格を取ることのできるコースを設けている単科大学もあります。