Israel Music Compilation

新企画 「Israel Music Compilation」

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    最新のイスラエルミュージックシーンをより多くの方々にご紹介するべく、日本の音楽関係者にセレクトしていただくコンピレーション・シリーズ (YouTube動画のプレイリスト) を開始します!
     
    第1回目は、ミュージシャン、音楽プロデューサーである久保田 麻琴さんセレクションです。
     
    普段耳慣れないイスラエルの音楽って?
    以下のリンクよりお楽しみください!

     


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    「音楽と街にはバイオリズムのようなものがある。10年前にスペインでたまたま見かけたBoomPamのライブの衝撃は生涯忘れないだろう。それから5年あとで彼らの東京でのショウを手伝うことになった。相変わらず素晴らしい演奏だったし、その時彼らが持ち込んだThe ApplesやKutimanなどのCDは驚くほど豊かな響きを持っていた。
    それ以来ずっと彼らの街、テルアヴィヴに注目している。そのバイオリズムは衰えることがないようだ。そのスタイルの幅広さ、響きの深さは、ある時期のキングストンやニューオーリンズを思い出させ、サンフランシスコで起きた一種コミューナルでeuphoricな音楽のヴァイヴレーションを伝える。2000年代最も重要な音楽のニュースだ。
    いったい何がこの街で起きているのだろう。全ての地球の音楽好きが注目するのは、時間の問題だ。」 (久保田 麻琴さんメッセージ) www.makotokubota.org  

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    《各アーティストについて》
     
     
    Walk in Jerusalem - Marshdondurma feat. Hazelnuts
     
    「イスラエルの渋さ知らズ」と呼びたい大所帯ブラスバンド、Marsh Dondurma(マーシュ・ドンドゥルマ)と、20世紀初頭のスウィング・ジャズを現代イスラエルで蘇らせる女性歌手トリオ、The Hazelnuts(ザ・ヘーゼルナッツ)の共演で、マヘリア・ジャクソンが歌って有名になったアメリカのゴスペル曲「Walk in Jerusalem」を実際にエルサレムを歩きながら演奏している。マーシュ・ドンドゥルマは東ヨーロッパのユダヤ系音楽であるクレズマーやバルカンのブラス、そしてアフロ・アメリカンなジャズやディキシーランドのブラス、アフロ・ラテンやアフロ・ブラジリアンのブラス音楽までレパートリーにするお祭りバンド。世界最高のブラスバンドを競ってセルビア・グチャで開催されるトランペット音楽祭にもゲスト出場している。また、ザ・ヘーゼルナッツはこの秋もジャズの聖地であるニューオリンズやシカゴ、ニューヨークを含むアメリカ・ツアーを成功させている。
     
     
    Malox, Echo&Tito, Uri Brauner Kinrot - Gaza Trip
     
    エルサレム旧市街西側の入り口であるジャッファ門から続く細い石畳の道、ダビデ通り。エルサレムを訪れた観光客なら誰でも一度は通る、お土産屋の続く通りを舞台にオリエンタルでダビーな曲を演奏するのは、Malox(マロックス), Echo & Tito(エコー&ティトー), Uri Brauner Kinrot(ウリ・ブラウネル・キンロト)from Boom Pamの三組合体バンド。マロックスはBalkan Beat BoxやBoom Pamにも参加してきた気鋭サックス奏者Eyal Talmudi(エヤル・タルムディ)とヘビーメタル出身ドラマーのRoy Chen(ロイ・チェン)によるアヴァンギャルド音楽デュオ。続くエコー&ティトーは女性歌手/MCのエコーと男性ビートメイカーのティトーによるオリエンタル・ヒップホップ・デュオ。さらに日本でも人気の地中海のサーフバンド、Boom Pamのウリがオリエンタルなギターを聴かせてくれる。
     
     
    Laila Laila - Laroz ft. Rechela
    Laroz(ラロズ)ことLaroz Haimは1990年代から活躍するベテラン・プロデューサー。Yemen Blues(イエメン・ブルース)のRavid Kahalani(ラヴッド・カハラーニー)や、この歌でフィーチャーされているアラブ系の女性歌手Rechela(レヒェラ)ら、中東系アーティストとの共演から、レゲエ~ダブのプロジェクトなど、作品やプロジェクトごとに異なった様々な顔を見せてくれる。近年はLaroz Camel Rider名義でテック・ハウス~アンビエント~サイケデリック・トランスに傾倒した作品をリリース。世界中のクラブDJたちにプレイされている。
     
     
    BEMET - Happy
    A-WA(エイワ)、Shai Tsabari(シャイ・ツァバリ)、Ramzailech(ラムザイレク)など、数々のイスラエルの人気バンドに参加し、ステージの最前列で蛍光色にデコレーションしたショルダー・キーボードを弾きまくるキーボーダー/プロデューサー、Hod Moshonov(ホド・モショノヴ)。彼のメインプロジェクトがBemet(ベメット)だ。ポルトガル語ブラジル方言で歌う女性歌手をフィーチャーした、キッチュなブラジリアン・ヒップホップ。
     
     
    Riff Cohen - A Paris
    リフ・コーエンは女優としても活躍するアルジェリア/チュニジア系イスラエル人の女性シンガーソングライター。イスラエルには1950年代以降に、モロッコやアルジェリア、チュニジアなど、マグレブ地域から移住してきたユダヤ人も多く、彼女はその二世。パリで音楽を学んだ後、国に戻り、シンガーソングライターとしてデビュー。パンク的なDIYサウンドとコケティッシュな歌声、パリやマラケシュなど異郷をテーマにフランス語やアラビア語で歌い、注目されている。
     
     
    A-WA - Habib Galbi
    2014年末、イスラエルのインターナショナル・ショーケース・フェスティバルで、国際的にデビューし、瞬く間に世界ブレイクした、イエメン系三姉妹がA-WA(エイワ、アイワ)。A-WAとはアラビア語で「Yes」の意味。Balkan Beat BoxのMC/ヴォーカリストで同じイエメン系のTomer Yusef(トメル・ユーセフ)がプロデュースしたエレクトロ・ヒップホップなサウンドをバックに、イエメン民謡直系のアラビックな旋律を三人がユニゾンで歌う。この「Habib Galbi」は後にJay Zにリミックスされるなど、1980年代末に世界ブレイクしたイエメン系イスラエル人女性歌手オフラ・ハザ以来のイエメン音楽ショック!
     
     
    Alon Eder & Band - Boi Nehama
    アロン・エデル(Alon Eder)はイスラエルのロック第一世代のギタリストを父に、有名俳優を母に持つ男性シンガーソングライター。1970年代のジョン・レノンやポール・サイモン、トッド・ラングレンなどを思わせるノスタルジックでメロディアスなポップ・ロックを作り続けている。この曲「ちょっとの愛では傷もつかない」は2014年の秋に大ヒットした。ヒットした理由を本人に尋ねたところ、「先の戦争(2014年夏のガザ侵攻)で人々の間に厭戦気分が広がっていた所に、愛の難しさを歌った歌詞がフィットしたんだと思う」とのこと。
     
     
    Isaiah - Go Sister
    旧約聖書の預言者イザヤの名前が付けられた男女デュオ、Isaiah(アイザイア)。ギターとギリシャの弦楽器ブズーキ、ジャンブシュ(トルコのバンジョー)、ヴォーカル担当のTomer Yeshayahu(トメル・イェシャヤフ)と、ヴォーカルとハルモニウム担当のMika Avni(ミカ・アヴニ)からなる。初期ビートルズやバーズ、サント&ジョニーなど、1960年代のアメリカやイギリスから抜け出たようなソフトなロックンロール、アシッド・フォークが特徴。この曲「Go Sister」のミュージックビデオはイスラエルの砂漠がロケ地に使われ、クエンティン・タランティーノの映画を思わせるサスペンス・ストーリー仕立て。
     
     
    Boom Pam Feat. Trifonas - NEDEN SAÇLARIN BEYAZLAMIŞ ARKADAŞ 
     フジロックに出演し、小島麻由美との共作アルバムをリリースするなど、日本でも人気の「地中海のサーフロックバンド」Boom Pam。この曲はイスラエルで1970年代に人気を博したギリシャ系音楽家、Trifonas(トリフォナス)との共作。彼らが尊敬する音楽家たちと共演するシリーズ・プロジェクトの第一弾として2014年にリリースされた。ギリシャのブルース「レンベーティカ」を今時のロウファイなロック・サウンドに仕上げることで、レンベーティカが阿片窟で生まれ育った底無しのダークサイド音楽だったことを思い出させてくれる。
     
     
    RPS Surfers - The Black Hawk
    RPS Surfersはギター、ドラムス、オルガン、ベースの四人組新人サーフロックバンド。この春リリースされたセカンド・アルバムはBoom Pamのウリがプロデュースし、テルアビブを代表するサウンドエンジニアのUri“Mixmonster”Wertheim(ウリ・ミックスモンスター・ヴェルトハイム)が録音したスタジオ・ライヴ盤。21世紀に入り、イスラエルだけでなく、ペルーやメキシコ、カンボジアやインドなどからもサーフロックがリバイバルしていることについて、ウリに尋ねたところ「サーフギターは、ロックのサブジャンルであり、ヴォーカリストではなく、ギタリストが主役になれる音楽だから」と答えてくれた。
     
     
    Buttering Trio - Little Goat 
    Buttering Trio(バタリング・トリオ)はイスラエルのジャズと英米のビートミュージックを繋ぐ最重要レーベル「Raw Tapes」の主催者で、プロデューサーとしても数々の作品を手がけるRejoicer(リジョイサー)が中心となり、ベーシストのBeno Hendler(ベノ・ヘンドラー)と女性歌手のKeren Dun(ケレン・ダン)が加わったフューチャーソウル三人組。この10月下旬に初来日が決定している。地中海のビーチに面し、解放的でありながらも、同時に中東ならではの緊迫した雰囲気を併せ持つ町テルアビブ。彼らの多層的なサウンドは、まさにテルアビブの町の環境が生み出しているのだろう。
     
     
    Ouzo Bazooka - Desert Love 
    Ouzo Bazooka(ウーゾ・バズーカ)はBoom Pamのウリが、彼にとってサーフロックと並んで重要な、もう一つの音楽的源泉である1960年代末~70年代のギター中心のサイケデリックロック~ハードロックを追求したバンド。現代のサイケデリックロックバンドであるオーストラリアのテーム・インパラやアメリカのブラック・キーズに負けない、強い個性はイスラエルならでは。なお、ウーゾとはギリシャ産のお酒で、フランスのパスティスやペルノー、トルコのラクと似たアニスのリキュール。アルコール度数は45度以上と高く、現在のイスラエルではウィスキーやラムと並んで、ショットグラスで一気飲みするのが大流行している。
     
    Funk'n'stein - All day long 
    Funk'n'stein(ファンクンスタイン)はアメリカの老舗ファンクバンド、パーラメントの名作アルバム「Clones of Dr. Funkenstein」からバンド名を拝借した8人組。トランペットのSefi Zislingら強者メンバーを揃え、圧倒的にパワフルなステージと、本家パーラメントから影響を受けた宇宙神話的なコンセプトで、イスラエルを代表するPファンクのグループとして人気が高い。
     
     
     
     
    テキスト:サラーム海上
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